教会報「聖鐘」巻頭言(2022年4月)


花咲くイースター 
牧師 司祭 バルナバ 大野 清夫
桜の花びらが乱舞する季節を終えて、私たちはイースターを迎えました。神の示された永遠の命とはどのようなものであるか、この季節に黙想しましょう。
英国の詩人ワーズワースは湖水地方の自然の中で心の平安を与えられ、永遠の命を思索しました。彼の詩にこのようなものがあります。
妹よ!おまえの朝の仕事を捨てて、
外に出て 陽の光を浴びるがよい
エドワードもそのうちやって来よう。
さあ 大急ぎで 散歩着に着替え、
書物はうっちゃって 今日一日
ぼんやりと過ごそう
われわれの あたりいちめんを
支配する 神の祝福された力から
われわれは魂の律動を生み出し
それを愛の調べに合わせよう
さあ 妹よ おいで!さあおいで!
大急ぎで 散歩着に着替え
書物はもううっちゃって 
今日一日 ぼんやりと過ごそう
我々の日常生活のリズムは、自然の中に隠されている神の祝福された力から得られるもの。自然に内在する愛の調べは私たちと一つになるとワーズワースは考えました。
ぼんやりと過ごすことは時間の無駄ではありません。時間の成熟とゆとりは怠惰とも見える生活の中にかくされているのです。19世紀英国の詩人キーツは、それを「勤勉な怠惰」と呼んでいます。 
飛び回るよりも、「花のように自らの花びらをひらいて」受身の姿勢でいることが正しい生き方なのです。忙しさが心を滅ぼします。現代人は無意識のうちに人間としての生活を失っています。
ワーズワースは自然に「賢く心をゆだねる」ことで人間が回復されると語るのです。
さあ友よ 本を捨てよう なぜ
そんなに 本ばかりを読むのか
さあ 森の紅ひわの声を聞きなさい 
その歌声は 美しい音楽!
たしかにあれは 人の知恵もおよばない
さあ聞きなさい! つぐみの楽しげな
鳴き声を! 
あれもつまらぬ説教などしない 
事物の光のなかへ入り込み 
自然から学ぶことにしよう
自然がもたらしてくれる法則は 美しく
われわれの小賢しい知性は  
事物の美しい姿を ゆがめる
われわれは 分析して壊している 
ワーズワースは18世紀産業革命の指導理念である科学的合理主義に異議申し立てを行い、人間の真理は自然の本質と一体化する時にわかるとしたのです。私たちは分析して壊していると警告するのです。
ワーズワースの弟は司祭、主教となったそうです。説教も素晴らしく、「つまらぬ説教などしない」方です。その娘ルーズ・ワーズワースは関東大震災復興支援のためUSPG宣教師として来日し、小田原と千葉の教会で宣教に励まれました。
湖水地方の教会にワーズワース一家の墓があります。そのお墓には「ワーズワースここ眠る。教会のために常に祈る。」と刻字されています。