教会報「聖鐘」巻頭言(2021年10月)


「ハロウィンとは」

 

牧師 司祭 バルナバ 大野 清夫 

 

最近ハロウィンが流行っています。ではハロウィンとはどういうものなのでしょう。『ブリタニカ百科事典』はこのように説明しています。

 

「アングロ・サクソン系民族の祝日。10月31日すなわちキリスト教の万聖節の前日をいう。古くはケルト人の祝日で、ケルト暦の大みそかにあたり、この夜悪霊や魔術師たちが戸外を駆けめぐって次の年の予報を声高に叫び歩いたという。現在でもこれらの習慣が残っていて、仮面をかぶって広場で踊り、子供たちがかぼちゃをくりぬいたランプをささげて行列を行う。」

 

ケルト暦の10月31日は大みそかですが、同時に夏の終わり、冬の始まりでした。死者の霊が家族を訪ねてくる時と信じられていました。

 

アイルランドでは冬が厳しく死者も多く出たそうです。その冬を越すために、人々は墓から出て来た死者と共に町をねり歩き、元気を出したそうです。仮面をかぶるのは、その時に出てくる悪霊や魔女から身を守るためでした。

 

カボチャのランプも魔除けの意味があるようです。アメリカ大陸でカボチャが出来るようになる以前は、スコットランドなどでは、カブを用いたそうです。

 

ハロウィンの語源は教会で祝われる諸聖徒日に由来します。ハロウィンが諸聖徒日の前夜に行われることから、諸聖徒日の昔の呼び名である"All Hallows"に、前夜という意味の“eve”をつなげて、"Hallows eve"と呼び、それが訛って、ハロウィン"Halloween"となったとされています。しかしハロウィンは教会の祝日ではありません。教会暦にも入っていませんし、教会の宗教行事としても祝われません。しかし聖公会やローマ・カトリック教会等のキリスト教の多くの教派は、ハロウィンを民間行事として楽しむことを容認しています。

 

プロテスタント教会の中には、ハロウィンにかなり否定的な教派もあります。しかしキリスト教はヨーロッパの基層文化の上に成立したものですし、ケルトの収穫祭がキリスト教化して諸聖徒日となったと考えられるので、ハロウィンは教会と無縁ではないでしょう。死者と共にパレードをして冬を越すというケルトの伝統は、西洋風お盆でもあります。盆踊りもまた、死者と共に踊るものなのですから。