教会報「聖鐘」巻頭言(2023年12月)

クリスマスツリー

 

牧師 司祭 バルナバ 大野 清夫

 

ロックフェラーセンターのクリスマスツリーが点灯したというニュースが流れました。18,000の電球で飾られたツリーで高さ23メートル、木の頂上の星はスワロフスキーで重さ250キロあるとアナウンサーが言っていました。1月13日まで点灯と言っていたかと思いますがツリーの点灯は1月6日の顕現日までのはずです。マスコミの関心はクリスマスツリーにあって、キリスト教にはあまりないのでしょう。

 

ではクリスマスツリーって何なのでしょう。その起源は8世紀のドイツまで遡るとされます。当時ドイツに定住していた古代ケルト族の中に、オーク(樫や檜など)を崇拝し、幼児を生贄として献げていた教団がありました。ある時、布教中の聖ボニファティウスが樫の木に幼児が生贄としてつるされているのを知り、残虐な行為を戒めて切り倒したところ、その樫の木の切り株からモミの若木が現れる、という奇跡が起こったそうです。そのことから、ドイツの人たちはクリスマスにモミの木を植えるようになったとのこと。資料が少ない時代ですので、この言い伝えが真実かどうかはわかりませんが、ツリーに関わる一つの伝承であることに間違いはありません。

 

ツリーに関わるもう一つの伝承はこのようなものです。16世紀のクリスマスイブの夜、マルティン・ルターは教会からの帰り道に、森の常緑樹の枝の間に輝く無数の星を見つけました。その美しさに打たれた彼は、モミの木の枝にろうそくを立てて自分が見た星空を再現したそうです。子どもたちはいたく感動したとのこと。そのことからドイツで、クリスマスツリーが一般の家庭に広まったそうです。

 

ツリーの頂上の大きな星は東方の博士たちを幼子イエスのもとに導いた「ベツレヘムの星」、アドヴェント・クランツに使われるとげのようなヒイラギの葉は、キリストが十字架につけられる前にかぶせられたいばらの冠を象徴していると言われています。その赤い実は、私たちの救いのためにキリストが流した血を、そして緑の葉は永遠の命を表すと言われます。ツリーには常緑樹が使われますが、それは強い生命力をもって一年中茂る緑の色、キリストが与える永遠のいのち、神の永遠の愛を表しています。赤と緑は、クリスマスカラーです。赤と緑に満たされたクリスマス、新年であることを祈りましょう。